第86章

「でも足を怪我しているのに、あなただからじゃなくても、見知らぬ女性でも、私は手を貸すはずです。それは当然のことですから」望月安はまだ手を離そうとしなかった。

彼も前田南が足を引きずって歩くのを見過ごすわけにはいかなかった。

前田南は苦笑いを浮かべた。

「前回の実家でも、私たちはそう思っていましたが、結局ひどい騒ぎになりましたよね」

「受付が済んだら、診察を受けるまで付き添って、それから帰ります」望月安は一歩後ろに下がった。

受付機はすぐ前にあったので、前田南もこれ以上言い争うのも面倒だと思い、同意した。

偶然にも、二人が受付に行ったとき、望月琛がちょうど大塚雪見を診察室から連れ出...

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